主体的に問題解決を行うためのシールの活用

見通しをもって粘り強く取り組むためには,次に何をしたらよいのか,その次に何をしたらよいのか,そういった問題解決の手順を体感として分かっていることが大事だと考えます.

そのためには,繰り返し繰り返し,問題解決を行うだけではなく,その手順も意識しながら行うことが大事だと考えます.

問題解決の方法は一様ではありません.それでも手順を意識して繰り返すためには,共通の手順をベースにする必要がありますし,できるだけシンプルであることが重要であると思います.それがシンキング・サイクルです.

私たちは,繰り返し手順を意識しながら問題解決に取り組むために,手順のシールを作りました.例えば,「課題の設定」のシールをノートに貼って課題を書き,「情報の収集」のシールを貼って収集した結果を書き込みます.

シールを貼るという行動を通して,手順を繰り返し学んでいくのです.子供はシールが好きですし,そういった効果も狙えます.

写真のようなシールを一人ずつ持ちます.そして,必要な時にノートに貼りながら,問題解決を行っていきます.シールがなくなればたくさんの問題解決をした事にもなります.目標になりますね.

問題解決能力等を育むためのICT活用

問題解決能力を育んだり,思考力・判断力・表現力等を育んだりするために,どのようにICT活用をしたらよいのか?

問題解決能力等は,課題をつかんだり,情報を収集したり,整理したり,まとめたり,批判されたり,改善を図ったり,複合的で総合的な学習活動の成果として得られるものとして考えています.

となると,ICTのみで直接的に問題解決能力等を育むことは困難であるという立場です.

また,問題解決能力等は短い時間で高まるとも考えにくいです.意図的な努力を重ねて,数ヶ月くらい経った後に,以前と比べると力が付いたなと感じられる,そういった性質と考えられます.

つまりは,学習過程(学びの過程)の繰り返し,つまりシンキング・サイクルの繰り返しによって,問題解決能力等は育まれるのだと考えます.

その際,ICTは,例えば,「情報の収集」の質を高めるためにインターネットを検索してみようとか,「整理・分析」の質を高めるために表計算ソフトを使って素早く正確なグラフを描いてみようとか,「まとめ・表現」において他者にわかりやすく伝えるためにプレゼンテーションソフトを使ってみようとか,こういったことに活用されると考えています.

このように考えると,社会人が問題解決の際にICTを活用する方法と似ているなと思うわけです.

社会人の活用法と似ているということは,先生方の日常的なICT活用法とも似ているわけですから,子供にも教えやすいといえます.まったく特別なソフトウエアや使い方であれば,研修が必要なります.普段から,先生方が使っているICT活用の技(というほどではないかと思いますが)を子供に伝えていく,それならば研修も不要なことが多いでしょう.「シンキング・サイクル+日常的なICT活用」から始めていくのだとも思います.(純)

シンキング・サイクルの全体像

シンキング・サイクルとそれらを支えるスキル等を解説します.

シンキング・サイクルそのものは,トップページに述べているとおり,探究の学習の過程と同じであり,図の青色のサイクルの部分になります.

青色のシンキング・サイクルの各ステップでは,あらかじめ鍛えられた「情報活用スキル」「ICT活用スキル」,もちろん「言語能力」なども発揮しながら,「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」を行うことが前提となります.

例えば「情報の収集」では,情報の収集のスキルを発揮する訳ですが,その際に「見方・考え方」を働かせて情報の収集をしたり,「見通し」をもって情報の収集をしたりします.こういった点が「情報の収集」の単なる発揮やスキルトレーニングとは異なると考えており,シンキング・サイクルに位置づける理由と考えています.
情報の収集そのものは,例えばグラフを読み解くなどスキルとして鍛えることはできます.しかし,生きて働く力にするためには,こうしたシンキング・サイクルといった問題解決の過程において,実践的に発揮していく事が必要となります.つまり,状況の中で学習する段階と考えています.

加えて,グループやペアで行うなどの協働学習を行うことも考えられます.
必要であればICTの活用も行います.整理・分析においてグラフを作成する際や,まとめ・表現においてプレゼンテーションを行う際などに,ICTを用いることは充分にあり得ると考えられます.
こういった学習過程の考え方は,「主体的・対話的で深い学び」とも適合していると考えています.

下側の黄緑色は,「情報活用スキル」「ICT活用スキル」を鍛えることを示しています.グラフ作成であれば,どのようなグラフで表現することが正しいか或いは分かりやすいかといったことを考え実行できることを「情報活用スキル」,一方で,表計算ソフトの操作を身につけて単にグラフが描けるようになることを「ICT活用スキル」と示しています.

最下部の桃色は,「学習規律」「ICT環境整備」です.言うまでもないことをあえて示しています.シンキング・サイクルが本格的に動き出せば,大人である我々もコンピュータなしで問題解決することはもはや不可能に近いように,ICT抜きで活動することは困難です.そこで,その基盤となるICT環境整備が必要と考えています.

また,各自が課題をもって自由に活動するとなると,一定の規律が必要となります.例えば,タブレットPCを子供に配布すれば,タブレットPCに子供は集中しているようにみえますが,それが学習に集中しているかどうかは分かりません.そういった意味で,自らを律して学んでいく姿勢づくりが必要であると考えました.